この研究では,社会保険料の増加によって発生する懸念がある,貯蓄(金融資産)の減少を視野に入れ,世代の違いによって発生する,再建費の不足額の違いを試算した.その結果(図14),現在の60歳代までは,社会的支援が現行の水準に保たれ,かつ地震保険が上限の保険金額で契約されていれば,再建費が不足することはないものの(試算結果(a)), 50歳代では,社会的支援と地震保険に関する同じ状況があったとしても,再建費が不足する場合の発生が予測された(試算結果(b)). このような結果,住宅再建における社会的支援のあり方や方法は,住宅所有者の経済状況(資産の保有状況)のみならず,保険などのような,災害に対処するための仕組みの実態を視野に入れ,さらには,その時代的な変遷を念頭において考えるべきことを示している.これらの点が,住宅再建に対する支援モデル(支援額の算定法)を構築するさいに必ず考慮されるべき事がらであることは言うを待たない.